今こそ安らかに
政所 邦明 牧師
ルカによる福音書 第2章12-18節
主題聖句: 「主よ、今こそあなたは、お言葉どおり この僕を安らかに去らせてくださいます。」
ルカによる福音書第2章29節
幼子イエス様が両親に抱かれて神殿に入ってきた瞬間、「主よ、今こそ…去らせてくださいます」とシメオンは語りはじめます。シメオンの言葉は「ヌンク(今)・ディミティス(去らせてくださる)」という題の讃美歌として教会の礼拝で唱われるようになりました。
「去る」とは(地上を)去る、すなわち「死ぬ」ことを意味します。まるで「死ぬ」ことを心待ちにしていたかのような言い方です。生きているのが苦痛だったのでしょうか。口では「死にたい」と言いながらだれでも心のどこかでは「何としてでも生き延びたい」と願うはずです。
しかし、〝今こそ〟とシメオンがいう時、気持ちが高ぶっているのでしょう。強がりでもなんでもなく「今こそ、安心して死ねる」と本気でいっています。「去る」には「願いが叶ったので、重荷と感じていたことから解放される」の意味が含まれます。ホッとした気持ちが強いのです。
「救い主を私の(両)目が(しっかりと)見たから…」― シメオンにとって神様の約束は現実となりました。「この地上にいる間に絶対に救い主に会わせる」と聖霊によって示しを受けていました。救い主に会えて自分は幸せ者だと思ったに違いありません。祝福の中におかれているのです。
2015年、教会員を多く天に送りました。信仰生活50年以上の方もおられれば、召される間際に信仰を言い表した方もおられます。信仰生活の長さは関係ありません。救い主にお会いすることが決定的で、お会いできれば、「思い残すことは何もない」とシメオンは教えてくれているのです。