泣かなくともよい
政所 邦明 牧師
ルカによる福音書 第7章11-17節
主題聖句: 「主はこの母親を見て、憐れに思い『もう泣かなくともよい』と言われた。…近づいて棺に手を触れられると…」
ルカ福音書第7章13節
ナインという町の門で、葬列に主イエス様と弟子たちとが出会います。町の中から郊外の墓地へ棺を運んでいるところでした。喪主と思われる一人の女性がひときわ目を引きます。嘆き悲しむ様子が際立っていたのです。やもめが一人息子を手塩にかけて育てておりました。その子の葬儀です。母ひとり、子ひとりの関係を引き裂いてしまう死は何と酷いものでしょうか。〝野辺の送り〟に加わった人もなすすべがありません。埋葬へ向かう流れを止めることはできず、その流れに身を任せるだけなのです。
ところがたったひとり、死への行進に立ちはだかった方がおられます。主イエス様は死の奥深くまで踏み込んでゆかれました。命へ向かう戦いが始まります。主イエス様だけが命へ押し戻すことがおできになるのです。「起きよ」と命令されれば、母親を悲嘆にくれさせていた死も逆らうことはできません。父なる神様は主イエス様を死から命の中に引き起こされました。3日間も墓の中におられても、陰府から主イエス様は復活されたのです。強力な敵である〝死〟が母から息子を奪いました。しかし、死を打ち滅ぼして、母に息子をお返しになったのです。
葬列を止められたのは、死に顔を見て、主イエス様が〝お別れ〟を為さりたいからだと人々は思ったでしょう。しばらくは葬列を止めてもやがて、「墓穴への行進が再開される。」と思った瞬間、若者の蘇生が起こりました。主イエス・キリスト様こそ「もう泣かなくてもよい」と言えるだけの実力を備えた大預言者であると人々は思い知ったのです。