恵みに踏みとどまれ
政所 邦明 牧師
ペトロの手紙一 第5章12-14節
主題聖句:「…短く手紙を書き、…これこそ神のまことの恵みであることを証しました。この恵みにしっかり踏みとどまりなさい。」
ペトロの手紙一 5:12
ご一緒に読んで、礼拝をしてきたペトロの手紙一も最後の部分になりました。パウロは目の病気を患っていたと言われています。十分に字を書くことができず、いわゆる〝口述筆記〟をしたのかもしれません。その際の助け手がシルワノです。それでも最後の挨拶は自筆で書いたと考えられます。たくさん書けない分、訴えたいことを短く凝縮したのでしょう。全体を一言でまとめて「これこそ神のまことの恵み」(12節)と申しました。
この手紙で「恵み」と新共同訳聖書に訳されている文字は9個です。もとの言葉は「恵み」でも、日本語にする場合、別の言葉に訳されたものが2つあります。「恵み」を「御心に適う」と訳しました。(第2章19、20節)不当な苦しみ、善を行っても苦しみ、それを耐え忍ぶなら、それは神の「恵み」、御心に叶い、神がお喜びになることだとペトロは言ったのです。
「恵み」には「与えられる」という修飾語が付いています。(1章10,13節) いくら神が与えられるとしても、苦しみはいやで避けたいものです。しかし、手紙を受け取る諸教会は苦しみと試練の中に置かれていました。迫害が起こっているのかもしれません。そのような情況を知りつつ、主イエスが十字架で不当な苦しみを受け、ご自分の尊い血で、先祖伝来の空しい生活からあなたがたを救ってくださったとペトロは語りました。最後にもう一度「これこそ神のまことの恵み」と念を押したかったのです。神の恵み以外にキリスト者が苦しみに耐えて立つ場所はないからです。